離婚時に取り決めておくべき7つの事項
離婚において、大きく分けて下記の7つの項目を定めることになります。
7つの項目について、順番に解説していきます。
①養育費
養育費とは子どもの生活費、教育費、医療費、被服費、お小遣い等を指し、協議離婚において、養育費は次の内容を決めることとなります。
養育費として定める事項
- 金額(毎月〇万円)
- 支払時期(毎月末日までに)
- 支払期間(成人するまで、高校卒業まで、大学卒業まで等)
- 大学入学費や節目にかかるまとまった出費に関しては、個別に条件を定める
- 大きな病気にかかった場合など、子の命に関わるような費用は別途定める
親には未成年の子どもを養育する義務があり、これは離婚して親権を有さなくなったとしてもなくなることはありません。
ここを勘違いされている方が稀にいらっしゃいますが、親権がなくとも養育義務はあります。
逆に子の面倒を看ている側なので、養育費を負担しなくても良いというわけではありません。
父母ともに養育費の負担義務があります。
ただし、その負担割合は父母のそれぞれの経済力に応じます。
離婚協議書では主に、子を引き取らない方の親が負担する養育費を定めることとなります。
基本的に、離婚後も子どもの生活水準が大きく変化しないように配慮しなければなりません。
日本で、一般的に支払われている養育費の金額は子ども一人につき、月額2万~4万円が多いと言われています。
父母の収入によっては、月額20万円以上というケースもあります。
弊所では、裁判所が公開する「養育費・婚姻費用算定表」を参考に、個別事情を考慮し双方話し合いの上、養育費を算定します。
②慰謝料
慰謝料とは、相手の不法行為(不貞行為を含む)が原因で結婚生活が破綻した場合に、受けた精神的苦痛に対して慰謝してもらうために支払ってもらう賠償金の事をいいます。
性格の不一致や相手の親族との不仲、相手と同程度の非難がこちらにもあるといった場合は、離婚は相手の不法行為だけが原因とは言えないため、請求することができません。
なお、不倫が原因で離婚する場合、不倫相手に不倫の認識があった場合に限りますが、その不倫相手に対して慰謝料を請求することできます。
慰謝料の金額に明確な基準はありませんが、離婚裁判ではおおよそ100万円~300万円の間で決められることが多いと言われています。
なお、慰謝料算定には下記の事情が考慮されます。
慰謝料算定に際し、考慮される事情
- 不法行為の内容と責任の度合い・精神的苦痛の度合い・婚姻期間の長さ
→婚姻期間が長いほど慰謝料は多くなります。 - 子どもの有無
→子どもがいる場合の方が慰謝料は多くなります。 - 当事者の社会的地位や経済状況
→相手の社会的地位や経済状況が良いほど慰謝料は多くなります。
慰謝料請求できる事情、できない事情
慰謝料請求できる事情 | 慰謝料請求できない事情 |
---|---|
・不倫 ・暴力 ・性交渉強要等 ・生活費を家庭に入れない ・相手の一方的な離婚の申し入れ | ・性格の不一致 ・相手親族との不仲 ・相手と同程度の非難がこちらにもある |
不法行為、不貞行為による離婚全てが裁判になっているわけではありません。
不貞行為が原因の離婚でも協議によって離婚に至るケースは多く、今まで同様のケースを何件も取り扱っています。
不法行為や不貞行為を原因とする離婚の場合でも、一度ご相談下さい。
③財産分与
慰謝料が請求できない場合でも財産分与は請求できます。
婚姻期間中に夫婦が協力して得た財産や負った負債を、離婚時に分け合うことを「財産分与」といいます。
慰謝料とは全く概念が異なり、仮に離婚の責任の100%が請求者側にあったとしても、財産分与の請求は可能です。
婚姻期間中に発生した収入は、夫婦共有のものであると取り扱われており、財産分与は離婚によって共有となった財産を清算する、という性質を有するからです。
一方が専業主婦(主夫)で収入がない等は関係がありません。
ただし、共有財産は、住宅ローンなどの債務も含まれるので注意してください。
なお、結婚前から有していた財産や、自分が相続により取得した財産は、その人固有の財産として取り扱われますので、財産分与の対象になりません。
財産分与の方法に特に法的な定めはありません。
このため、どの財産をどのように分けるか等はお互いの話し合いで決めることになります。
当事務所では具体的な事情をお伺いし、お二人に合致した財産分与額を算定させて頂きます。
その額をもとに更に打ち合わせを続け、お二人がしっかりと合意できる財産分与額を決定します。
なお、住宅ローンが残っている場合、次のようなケースでは財産分与を考える際、特に注意が必要です。
住宅ローンが残っている財産分与で、検討を要する場合
- 一方が専業主婦
- マイホームが夫名義
- 財産分与でマイホームを妻に渡したい
上記の場合でも妻にマイホームを財産分与するという内容は有効ですし、名義変更も問題なく可能です。
しかし、住宅ローンの返済者を夫から妻に変更することは、ほとんどの場合で銀行が許可してくれません。
これは、銀行は夫の収入や返済能力を審査して住宅ローンの融資をしているからです。
こういう場合、返済者は夫のまま、名義も夫のままで妻と賃貸借契約を結び、離婚後は毎月の養育費から賃料を相殺する等の形をとる等、対応できる方法は色々あります。
どの方法でも折り合いがつかない場合、なるべく高い額での不動産売却を模索することとなります。
この場合、不動産を1円でも高く売らなければなりません。
弊所では、このお手伝いをさせて頂いております。追加の費用は一切かかりません。
財産分与の対象になるもの、ならないもの
財産分与の対象になるもの | 対象にならないもの |
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夫婦協力して取得した財産や負った債務 ・不動産(マイホーム等) ・預貯金、現金・株式、仮想通貨・車、家財道具一式 ・保険金・退職金、退職前であれば支払額確定分・債務(住宅ローン等) | 主に各自固有の財産・債務 ・結婚前から各自が所有していた財産 ・結婚後に相続した財産 ・結婚前からあった借金 ・結婚後でもギャンブル等の浪費によって発生させた借金 ・別居後に各自が取得した財産 |
④婚姻費用
婚姻費用と聞くと、結婚する時にかかった費用、というような印象を持つかもしれませんが、全く異なります。
婚姻費用とは、結婚生活を送る上でかかる生活費(衣食住の費用、医療費、教育費など)のことを指します。
夫婦には婚姻費用の分担義務があります。
わかりやすく言うと、専業主婦やパートで収入が少ない妻に対して、収入のある夫は生活費を渡さなければならないということです。
離婚するまで別居期間が一定期間あり、その間、夫が生活費を妻に渡していなかった場合、未払いの生活費に関しては「婚姻費用」という形で夫に請求することができます。
事情によっては、離婚協議書にこの費用も盛り込むことになります。
婚姻費用の計算方法に明確な決まりがあるわけではありませんが、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に、具体的な事情を伺い計算をします。
⑤年金分割
夫がサラリーマン(第2号被保険者)で、妻が専業主婦の場合、妻は第3号被保険者という扱いになり、年金保険料を負担しなくとも、年金保険料を支払ったのと同じ扱いとなり、将来年金をもらうことができる、というのは誰しもがご存じのことだと思います。
しかしこのままでは将来、夫は老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金を受け取ることができるのに対して、妻は老齢基礎年金のみしか受給できないことになります。
これでは将来もらえる年金額が全く異なることとなり、不公平ということになるでしょう。
年金分割は、この不公平を解消すべく、夫の将来もらえる年金の一部を妻がもらえるようにするための制度です。
一般的に、婚姻中の男女は収入差があります。
夫がたくさんの年金保険料を納付できているのは、妻が家庭を内から支えている、いわゆる内助の功があるからという考えに基づき、婚姻期間中に夫が支払った年金保険料は、妻と共同で納付したとみなしてお互いの将来の年金額を計算しよう、というのが年金分割の趣旨となります。
財産分与の一部として、この年金分割を定めることになります。
年金分割によって変更される妻の納付額の計算方法
- 妻が専業主婦の場合・・・夫が支払った年金保険料の原則2分の1
- 妻が共働きの場合・・・・2人が納付した年金保険料を足して2で割った額
将来の受給年金(年金分割の前と後)
年金分割前 | 年金分割後 | |
---|---|---|
夫 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金の2分の1 |
妻 | 老齢基礎年金のみ | 老齢基礎年金+老齢厚生年金の2分の1 |
※実際、年金分割によって得られる年金の計算はもっと複雑です。上記は簡易な説明とご理解下さい。
年金分割をする場合、年金事務所で別途手続きをしなければなりません。
この手続きも併せて弊所で行います。
なお、年金分割は厚生年金や共済年金を対象にした制度ですので、夫が自営業の場合は、国民年金保険料のみを納付しているため、対象外となりますのでご注意ください。
⑥親権
子が未成年の場合、夫婦のどちらかを親権者に指定しなければ離婚することができません。
協議離婚では、ご相談に来られる前からすでに親権をどちらが持つかは決まっていることが多く、逆に親権者が決まっていないケースではほとんどの場合で裁判による離婚となっています。
親権者を父母のどちらにするか定める基準(過去の裁判例による)
胎児 | 妊娠中に離婚した場合は、原則として母親が親権者となります。出生後、話し合いによって父親に変更することも可能です。 |
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0~満9歳 | 乳幼児期には、母親の世話や愛情が必要とされ、ほとんどの場合で母親が親権者になります。 |
満10~満14歳 | 子どもの意思を考慮に入れて決定することもありますが、基本的には母親が親権者になることが多いです。 |
満15歳~満17歳 | 子どもの意見を聞く必要があります。その上で、生活環境や精神的な影響を考慮して親権者を決めます。 |
⑦面会交流権
離婚後、子どもと離れて暮らす親には、離婚の有責性が高くとも、子どもと会ったり連絡をとったりする権利(面会交流権)があり、親権の有無に関係がなく、これは一方の親が拒否できるものではありません。
離婚後に面会交流に関する事項を話し合うのは現実的に難しいため、離婚協議書においてあらかじめ定めておくことが後々のトラブルを防止するのに役立ちます。
原則として面会拒否はできませんが
- 相手が暴力をふるう
- 養育費を支払う能力があるにも関わらず支払わない
- 一方の親の悪口を吹き込む
など子どもの福祉に悪影響を及ぼすおそれのある場合、家庭裁判所に申し立てることにより、面会の拒否や制限をすることができます。
一般的に離婚協議書では、面会交流することを前提に、その頻度やスケジュール等に関して、定めることとなります。