相続開始後に行う確認と財産調査
相続税の申告は、家族が亡くなった直後からすぐに申告書を作るわけではありません。まずは遺言書の有無を確認し、誰が相続人になるのかを確定させる必要があります。相続人の確認では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集め、配偶者や子、父母、兄弟姉妹といった相続関係を整理します。相続人を正しく把握できていないと、遺産分割協議をやり直すことになるため注意が必要です。
次に、預貯金、不動産、株式、生命保険金、貸付金などのプラスの財産を調べます。同時に、借入金、未払金、葬儀費用など、遺産額から差し引ける項目も確認します。通帳や残高証明書、固定資産税の通知書、証券会社の取引報告書、保険証券などを集め、亡くなった日時点の財産状況を一覧にすると整理しやすくなります。
財産調査では、名義だけで判断しないことも大切です。家族名義の預金であっても、実際には亡くなった方が資金を出し管理していた場合、相続財産として扱われることがあります。過去の贈与や現金の保管状況も含め、漏れなく確認しましょう。
相続税が必要か判断して遺産を分ける
財産と債務を整理したら、相続税の申告が必要かを判断します。相続税には基礎控除があり、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に、原則として申告と納税が必要です。基礎控除額は、三千万円に六百万円を法定相続人の数だけ加えて計算します。たとえば法定相続人が三人なら、基礎控除額は四千八百万円です。
ただし、単純に預金や不動産の合計額だけを見て判断するものではありません。生命保険金や死亡退職金には一定の非課税枠があり、借入金や葬儀費用は控除できる場合があります。一方で、一定期間内に受けた贈与が相続税の計算に加算されるケースもあります。不動産は購入価格ではなく、相続税上の評価方法に沿って金額を求めるため、早めに資料をそろえることが重要です。
申告が必要と分かったら、相続人全員で遺産分割について話し合います。遺言書がある場合は原則としてその内容を確認し、ない場合は遺産分割協議を行います。誰がどの財産を取得するかによって、各相続人の税額や利用できる特例が変わる可能性があります。話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名し、実印を押して申告の準備を進めます。
申告書の作成から提出と納税までの流れ
相続税の申告期限は、通常、相続の開始を知った日の翌日から十か月以内です。申告書は、亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署へ提出します。相続人の住所地を管轄する税務署ではないため、提出先を間違えないようにしましょう。提出方法には、税務署への持参や郵送のほか、対応条件を満たせば電子申告もあります。
申告書には、相続人や取得財産、債務、税額控除などを記載し、戸籍関係の書類や遺産分割協議書の写し、本人確認書類など、状況に応じた添付書類を準備します。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例によって納税額がゼロになる場合でも、特例を受けるために期限内申告が必要となることがあります。基礎控除以下かどうかだけでなく、特例の適用条件まで確認することが大切です。令和八年中に亡くなった方の申告では、令和八年分用の申告書様式を使用します。
納税期限も原則として申告期限と同じです。現金で一括納付することが基本ですが、納付が難しい場合には、一定の条件を満たすことで延納などを検討できる場合があります。期限を過ぎると加算税や延滞税が発生する可能性があるため、申告期限から逆算して進めましょう。財産の種類が多い場合や評価が難しい場合、相続人同士の調整に時間がかかる場合は、早い段階で税理士などの専門家へ相談すると安心です。
