遺言に書かれた遺産分割の禁止は無視できる?
定められた期間は例外なく遺産分割は禁止
実務では滅多にありませんが、民法908条により遺言で5年以内の期間を定めて遺産の分割を禁止することが出来ます。
この禁止は絶対的な禁止とされ、仮に相続人全員と受遺者、さらには遺言執行者の同意があったとしても、その期間が経過するまでは遺産の分割が禁止されます。
遺産分割の禁止の活用例
参考までに遺産分割の禁止が活用される事例を説明します。
未成年者と親権者がともに相続人となる場合は、未成年者と親権者は相続財産を遺産分割協議という話し合いで分け合うこととなります。
親権者の取り分が増える、それはつまり未成年者の取り分が減る、という関係にあるため利益相反となり、親権者は法律上、未成年者の代理人となることが出来ません。
これを回避するため家庭裁判所に未成年者のための特別代理人の選任申立てをすることになるわけですが、これが非常に面倒で、お金も時間もかかります。
そのため、未成年者が成人まであと少しというような場合は、その期間遺産分割を禁止することにより、未成年者が成年になるまで待ち、結果として特別代理人選任の手続きが不要になる、というわけです。
しかし、そもそも残された母子のために財産の分割ができないということは、その間、亡夫の遺産を使うことが出来ないというわけで、その方が母子にとってはデメリットとなります。
あくまで遺産分割の禁止は制度としてある、というだけで実務では全くと言っていいほど活用されていません。
遺産分割禁止は絶対的禁止
定められた期間は例外なく遺産分割は禁止される。ただし、実務では全く使われていない。