登記のやり直し(更正)について、過去にあった事例

登記のやり直しは意外とレア

名義変更の伴う登記のやり直し(更正)は実務ではあまり多くありません。それは以下の理由からです。

・登録免許税が2%と高額

・場合によっては贈与扱いとなり贈与税がかかる

・不動産取得税がかかる

事案の背景

 とある田舎の山を購入したお客様のお話です。ご夫婦のうち、奥様が売買金額の全額を出されて物件を購入されました。しかし、不動産屋さんへ行ったり、物件を見に行ったり、売買契約等はご主人が進めていたこともあり、売買契約書上の買主はご主人、実際に売主様に対して売買代金を振り込んだのもご主人、しかしそのお金を事前に奥様からご主人の口座に預け入れられたものでした。

ご主人名義の登記が完了してしまう

 そのような背景を知らない不動産屋、司法書士が当然のようにご主人の名義として所有権移転登記の申請を行い、山の名義は売主からご主人に書き換えられました。ご夫婦も購入対象の山が比較的安価なこともあり、名義に関してはあまり深くは考えていなかったそうです。名義変更が完了したのち、ふと冷静になった奥様、将来、もし離婚をしたらこの山の権利は誰のものになるのか?これを調べるとどうやら怪しい雲行きとなります。

弊所への相談

 奥様から万が一に備えて名義を自分に変えておきたいという相談があり、今回の「登記のやり直し(更正)」を検討することになりました。夫婦仲は大変良いお二人でしたので、特段揉めることなくご主人から奥様に名義を変更しようと決まりました。

検討すべき点は一つ

 登記のやり直し(更正)につき、検討すべき点は一つ、それは前の所有者の協力を取り付けることができるか否かです。前の所有者の協力を取り付けることができれば、登録免許税は評価額×2%ではなく、1,000円で済むことになり、贈与税はかからず、不動産取得税もかかりません。ただ、前の所有者には実印、印鑑証明書、古い権利書等を用意してもらう必要があったりと、大変面倒な割に、一切メリットがないため、実務では中々実現することがありません。結果、本件では前の所有者が関与しない方法で登記のやり直しをすることになりました。

真正な登記名義の回復とは

 前の所有者が関与せず、登記のやり直しをする方法は一つしかありません。それが「真正な登記名義の回復」です。これはどのような状態であってもやり直しができるという利点がある一方で、税金がフルにかかってくる、という大きなデメリットがあります。余談程度に実際にどのような文言の書類を作って、法務局に提出するか見てみましょう。

法務局に提出する書類の一部抜粋

(1)前所有者A(住所 大阪市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号)は、後記の本件山を所有していた。前所有者は妻に対し、令和5年〇月〇日、本件不動産を売却した。

(2)上記(1)に基づき、前所有者・妻間の売買を原因とする所有権移転登記をすべきところ、誤って夫を所有者とする所有権移転登記がされた。

(3)上記(2)の誤りを是正するため、前所有者は妻のために、夫の所有権登記を抹消して、妻所有とする所有権移転登記を行うべきところ、前所有者からは登記手続きの協力が得られない。

(4)よって、夫は、妻に対し、本件不動産につき真正な登記名義の回復を原因として移転する。

結果

 今回の対象物件である山が比較的安価であったこともあり、各種の税金の負担は許容できる範囲のものでした。上記の真正な登記名義の回復を用いて無事、登記のやり直し(更正)を終えることができました。

今回かかった費用

・登録免許税  4万円

・不動産取得税 6万円

・司法書士報酬 5万円

・その他実費  4,000円

 なお贈与税は実際にお金を出したのが奥様であったことから、かかっておりません。そうだとしても今回のお手続きで15万円以上の費用がかかっているので、これから不動産を購入する方は、誰の名義で登記をするのか?という点についてはしっかり検討した上で手続きをしましょう。

余談

 親がお金を出したものの、名義は子で取得したい、というような希望は大変多いです。これはいわゆる「贈与」にあたってしまうわけですが、やり方によっては合法的に子の名義として取得することが可能です。方法は多数あり、またの機会にその方法も記載したいと思います。もし直近の名義変更でお困りの方がいればお気軽にご相談下さい。

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