成年後見
2025/01/23
成年後見制度とは
認知症等が進行し、判断能力が低下すると、必要のない高額な商品を買ってしまったり、逆に必要な契約行為ができなかったりと、判断能力低下に起因する不利益を被ってしまうことがあります。
そうならないように、裁判所に成年後見人という代理人を選任してもらい、その成年後見人が本人に代わって法律行為、財産の管理行為等を行い、これをもって本人の権利を保護する、これが成年後見制度です。
支援をしてもらう人を「成年被後見人」、支援をする人を「成年後見人」と言います。
2つの成年後見制度
成年後見制度には大きく分けて2つの制度があります。
「法定後見制度」と「任意後見制度」です。
この2つの制度の大きな違いは成年後見人の選任方法(後見人を裁判所が選ぶか本人が選ぶか)、取消権の有無(後見人に取消権があるか否か)、本人が判断能力を完全に喪失しているか否か、です。
法定後見制度
本人が判断能力を完全に喪失している場合に利用されます。
成年後見人を家庭裁判所が選任します。
実務では、預貯金をおろしたいものの、本人の認知症がかなり進行しており手続きができず、このため成年後見人を選任して手続きを進めるといった利用のされ方が最も多いです(後見全体の3割以上)。
不動産を売却したいという理由で後見制度を利用する方も全体の1割以上いらっしゃいます。
法定後見制度では、後見人は裁判所の職権によって選任されるため、本人や本人の家族が後見人となる人を選ぶことはできません。
任意後見制度
判断能力低下に備える方のための制度です。
元気なうちから任意後見人となる者を本人が指名し、その者との間で任意後見契約を締結しておきます。
実際に判断能力が低下すれば、諸手続きを経た上で、任意後見人として指定された者が後見人に就任し、代理人として様々な法律行為を行います。
本人の好きな人を後見人に選ぶことができるというメリットがあります。
通常、任意後見契約のみを締結するというケースはあまりなく、後述する見守り契約、財産管理契約等と組み合わせて運用することが多いです。
なお、法定後見制度と異なり、任意後見人には取消権がありません。
このため、自分が誰かに騙されて高額な商品を売りつけられてしまうかも!という危険があるような方の場合、任意後見制度ではなく法定後見制度を利用した方が防御面ではメリットがあるということになります。
2つの成年後見制度の比較
法定後見制度 | 任意後見制度 | |
---|---|---|
メリット | ❶取消権がある ❷監督機関が何重にもあるので、 不正が起こりづらい | ❶本人が自由に後見人を 選ぶことができる ❷後見報酬は好きな額を 定めることができる ❸後見人は投資的な支出が可能 |
デメリット | ❶本人が後見人を選べない ❷後見報酬が発生する ❸後見人は投資的な お金の使い方ができない | ❶取消権がない ❷必ず任意後見監督人 (裁判所選任)がつく ❸比較的少額ながらも 任意後見監督人の報酬が発生する |
特徴 | ❶被後見人に判断能力がなくとも、 各種契約、手続きを後見人が 行うことができる ❷本人の行為能力を制限することで、 本人を守る効果がある ❸被後見人の財産を親族の 使い込みから守ることができる | ❶被後見人に判断能力がなくとも、 各種契約、手続きを後見人が 行うことができる ❷本人の行為能力を制限する 制度ではなく、本人の信頼できる 相手に手続きを任せる制度である ❸被後見人の財産を親族の 使い込みから守ることができる ❹認知症が進行し過ぎていると、 任意後見制度を選ぶことができない |
後見人となる者の比較
大きくは親族等の身内と司法書士等の専門職に大別されます。
それぞれのメリット、デメリットをみていきます。
専門職後見人 | 親族後見人 | |
---|---|---|
メリット | ❶専門的知識がある ❷帳簿作成、裁判所への報告、 後見業務の各種負担を 専門家に丸投げできる | ❶被後見人からすると身内なので安心 ❷後見報酬がかからない |
デメリット | ❶後見報酬が発生する | ❶専門的知識がなく時間が取られる ❷帳簿作成、裁判所への報告、 後見業務などを行う親族の負担が重い ❸一定額以上の財産がある場合、 後見監督人がつけられ、 監督人報酬が発生する |
成年後見制度の活用をおすすめする方
判断能力の低下により、本人だけでは契約や諸手続きを行うことができない方
!
- 銀行等の金融機関、証券会社で手続きを行いたい
→預金をおろしたり、定期預金の解約は本人しかできないためです。 - 不動産を売却したい
→判断能力が低下していると法律上、売買契約ができません。
代理でするにも判断能力低下により、委任行為自体が制限されてしまいます。 - 遺産分割協議を行いたい
→判断能力が低下している場合、遺産分割協議に参加することができません。
騙されて高額な商品を買ってしまう可能性があるなど、財産の管理が心配な方
!
- 詐欺被害が心配
→成年後見人がついている場合、成年被後見人が例えば100万円の布団を買う契約をしてしまった、といったような場合でも取り消すことができます。
クーリングオフ期間が過ぎていても関係がありません。
ただし、任意後見制度には取消権がありませんので注意を要します。 - 家族が本人の財産を使い込む可能性がある
→財産管理自体を成年後見人に移行していれば、親族が使い込むことができません。
任意後見契約とセットで利用すると効果的な2つの契約
死後事務委任契約と同じように、任意後見契約だけを単体で利用するケースはあまりありません。
任意後見契約の効力がスムーズに発揮されるために必要な見守り契約とセットで利用されることが最も多く、次いで遺言との組み合わせが多いです。
また、見守り契約と任意後見契約の中間的なポジションを担う財産管理契約とも併用することも多いです。
見守り契約
1
任意後見契約がスムーズに効力を発揮できるようサポートをするための契約です。
専門家に定期的に訪問等をしてもらい、日々の生活に支障が出ていないかを確認をしてもらいます。
財産管理契約
2
任意後見契約と見守り契約ではカバーできない日常的な預貯金の管理等を行うための契約です。
判断能力はしっかりしていても、健康上の理由で出歩くことが困難な場合に有用です。
子が知的障がい等の精神上の障害を持っている場合、子をサポートする親が先に亡くなってしまうと残された子が一人で生きていくには相当の困難が伴います。
親亡き後問題とは
障がいをもっている子が残されたら
残された子をどのようにサポートしていくか、詳しくはこちらをご覧ください。
必要な書類
- お認印(被後見人となる方)
- 住民票(被後見人となる方)
- 戸籍謄本(被後見人となる方)
- マイナンバーカード等の身分証明書(被後見人となる方)
費用のご案内
成年後見等申立書類作成 (法定後見制度) | 報酬90,000円〜 |
---|---|
任意後見契約に関する手続き | 報酬70,000円〜 |
見守り契約 | 報酬20,000円〜 |
財産管理契約 | 報酬30,000円〜 |
ご依頼の流れ
法定後見の場合の流れ
家庭裁判所に成年後見の申立て
STEP4
必要書類を揃え、家庭裁判所に成年後見の申立てを行います。
各家庭裁判所の込み具合にもよりますが、概ね申立てから1か月後くらいの日程で依頼者様には家庭裁判所に行って頂き、担当者より今回の成年後見の申立てに関して、簡単な面談を受けて頂きます。
後見人の選任
STEP4
先の面談を踏まえ、家庭裁判所が後見人を選任します。
本人の所有財産額が500万円以下程度であれば、ご家族の方が後見人になれることが多いですが、500万円を上回っている場合は殆どのケースで司法書士等の専門職後見人が選任されることとなります。
後見人の選任が終われば、今後、その後見人が本人の代わりに様々な法的手続きを行っていくこととなります。
任意後見の場合の流れ
よくある質問
- 依頼をした場合、申立てから後見人選任までの期間を教えてほしい
- 1か月半〜2か月半程度かかります。
申立てをするための資料を収集したのち、家庭裁判所に申立てを行います。
その後、家庭裁判所で面談を行い、その結果を踏まえて後見人が選任されます。
本人に完全に意思能力がない場合は、本人の鑑定が不要となり、その場合は早いです。
本人の意思能力が多少なりともあれば、鑑定を要する場合があり、その場合は期間が長くかかります。
- 成年後見人に支払われる報酬はいくらですか?
- 法定後見の場合、被後見人の保有する財産に比例します。
おおよそで毎月2万円〜3万円程度が相場となりますが、金額は家庭裁判所が決定します。
任意後見の場合、任意後見契約書に報酬額を定めます。
全体的に法定後見の報酬より少し高くなることが多いですが、あまり大きな差はありません。
- もともと父に扶養されていましたが、父が被後見人となったあとでも扶養を受けられますか?
- 父親に扶養義務がある場合や、援助の継続が相当であり、本人の意思に沿うのであれば、本人の財産から生活費を支出しても良いとされています。
しかし裁判所に必ずお伺いを立てる必要があり、扶養をする事情を裁判所にしっかりと説明する必要があります。
事情次第では子のための生活費支出が認められない場合もあります。
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